2014年4月13日日曜日

My Nara(マイ奈良)4月号に掲載しています

4月1日に発行された、「マイ奈良」4月号の、
Life styleというページで、奈良ホテルの「ザ・バー」ヘッドバーテンダーの
宮﨑剛志さんのインタビュー記事を掲載していただいています。

宮﨑さんは、奈良ホテルで働く傍ら、独学でお酒について学び
カクテルのコンペティションで国内1位、世界3位の成績を収めた方。
切れ者、という眼光鋭い武士のようなたたずまいと、
ホテルマンならではの物腰の優雅さを持ち合わせた、とっても魅力的な
方です。

20年のホテルマンとしての活躍と、
世界に名を残すバーテンダーとしての活躍。

その裏には、
夢を絶対に諦めない、という熱い思いと、
日々、夢に向かって努力する真摯な姿勢と、
毎日の、目の前の仕事をおろそかにしない誠実さが、
びっちりと詰まっていました。


飲ませていただいたカクテル(世界3位を取ったときに作った、
宮﨑さんを代表するシグニチュアカクテル)「シロック・ヴィンヤード」は
そこはかとなく薔薇の香りのする、優しいカクテルです。

奈良に行かれる際には、ぜひ、奈良ホテルの「ザ・バー」で
この一杯を飲んでいただきたいな、と思います。

本当に美味しいですよ。



次回は7月1日のマイ奈良にて。


2014年4月7日月曜日

器と中身の話

4月になりましたね。
新たな生活が始まった方も多いのではないでしょうか?



さて、少し前の話になりますが、3月末にフェスティバルホールで杉本文楽を
観てきました。
フェスティバルホールは、2013年4月に新生フェスティバルホールとして生まれ
変わったところ。まだピカピカで、とても良いホールです。

杉本文楽、と銘打ったこの公演。杉本博司さんは多方面で活躍する写真作家
さんです。
古き日本の佳きものに対する審美眼はさすがのもので、舞台の上には必要
最低限の道具しか出ていないのに、それが物語へ誘うこと、誘うこと!
人の想像力を巧みにかき立てる舞台でした。
そりゃあ、日常の文楽公演からすれば舞台は暗いし、書き割りはないし。
でも、それがとても格好良かったのです。

ただ…。
舞台と映像のコラボレーションはちょっとキツかったかな、と。
文楽人形のバックで、人形を寄りで撮った映像が流れるシーンがあるのですが、
それはちょっと観ていて…醒めてしまいました。

あと、これだけは言いたい。
三味線と語りが、マイクを通してのPAだったのですが、音質が悪くて浄瑠璃の
良さが全然伝わってこなかったこと!
そして、舞台が広すぎて、客席が広すぎて、人形の細やかな温度感が伝わって
こなかったこと!!

この二点は、他の演出が良くても、とてもとても、とっっっっても残念でした。
文楽の第一の魅力は浄瑠璃であると思います。
それが、キンキンしたマイクの音に変換されるのは、とっても哀しいし、
物語に入っていく事をとても難しくさせます。
おそらく、西洋の発声法に対応している音響さんでは難しい事だったのかも
知れませんが…。特に、呂勢太夫さんの声質には全然合っていなくて、残念。
あと、今回は回り舞台ではなくて、太夫さんがご自身で出捌けをなさるのです
が、舞台が暗すぎて、高齢の嶋太夫さんにはお気の毒でした。

そして、舞台が広すぎて、人形の動きの機微が伝わってこなかったこと。
これが、200〜300席のホールなら、どんなに良かったことか。
広すぎると、細部が見えず、「誰が動かしても一緒」という気分にさせられます。

どれだけ作品が良くても、
  ・どこでやるか
  ・誰がやるか
  ・誰が観るか
  ・いつ観るか
これはとっても大切だと、身に染みました。
いい作品だと思うのに、とってもとっても勿体ない。
杉本博司さんの世界観もとても素敵で、鶴澤清治さんの三味線なんて、ぞくぞくっと
するくらいモダンで格好良くて痺れました。
そして、これを企画した方の意欲と先見の明にも感服致しました。
それが揃っても尚!
  ・どこでやるか
  ・誰がやるか
  ・誰が観るか
  ・いつ観るか
これがびしっと揃わないと、気持ちいい公演にはならないのですね…。

そう思うと、脈々と受け継がれてきた伝統芸能と言うのは、残るべくして
残ってきた、理由があるように思います。

どこぞの首長か知りませんが、ご自分の一方的な考えで、文化の根を絶やすような
事はしてはなりませんね…。


と、つれづれなるままに、失礼致しました。



2014年4月3日木曜日

朝倉摂さん

去る3月27日、舞台美術家の朝倉摂さんが、天国へ旅立たれました。

摂さんは、私にとってずっとずっと憧れの人でした。
今でも、憧れの人です。

大学を卒業して、大阪で会社員として働き始めたものの、観客としても
なかなか「これ!」という舞台に巡り会えず、悶々としていた頃。
何気なく図書館で開いた図録に、心を揺さぶられました。
その頃の私は、好きな芝居の台本に合わせて、自分で演出を考えたり
舞台美術をスケッチするのが好きだったのですが、そんな自分の
ハートにクリーンヒットする舞台美術に出会ってしまったのです。
それが、朝倉摂さんの美術でした。
「朝倉摂のステージワーク」という図録。
どのページをめくっても、ゾクゾクするような舞台セット。
そして、演出と、照明と解け合うような効果。

それから先は、摂さんが舞台美術を手がけられる公演を探して観劇する日々。
図録で観た作品が、実際のセットとして活き活きと使われているのを
観るのも圧巻でした。


一度、お仕事をお願いしようと、知り合いの方に紹介していただき
代々木のアトリエに伺った事があります。
緊張して何を喋ったかもはっきりとは憶えていませんが、とにかく気さくに
お引き受け頂きました。「いいよ、やるよ」とあっさり言ってくださった
その気っ風の良さが、いかにも江戸っ子でかっこ良かったのは、はっきり
記憶に残っています。
その後、様々な事情でその依頼はなくなってしまったのが、今でも心残りです。

それから、横浜のBankARTで開かれた「朝倉摂展アバンギャルド少女」という
展覧会にあわせて組まれた5回講座(だったかな?)の摂さんの講義にも
参加させていただきました。
そのとき、もう87歳だったのですね…。
矍鑠として、ペットボトルの蓋もご自分でキュッキュと開けておられたのが
とても印象的でした。
一言一言が宝石のようで、惜しみなくご自身の価値観と当時の思い出を
お話してくださいました。


そして、告別式。
摂さんとの3回目の対面がこんな形とは哀しすぎましたが
たくさんの人に囲まれ、たくさんのお花に囲まれ、摂さんはとてもきれいでした。
いつもかっこ良かった摂さん。
好きなものは好き、いいものはいい、そしてダメなものには本気で怒る。
91歳の大往生、と言われるかも知れませんが、
私にとっては、100歳も、200歳になるまでも生きていていただきたい方でした。



図書館で出会ってから、たくさんのものを頂きました。
音楽座の「リトル・プリンス」大好きでした。
本当に、本当にありがとうございました。

心から、お悔やみ申し上げます。
摂さん、さようなら。


http://www.amazon.co.jp/朝倉摂のステージ・ワーク-1991‐2002-朝倉-摂/dp/4891946369/ref=pd_sim_b_1?ie=UTF8&refRID=08V922WF9HYQNMQDHPYA